「やりたい仕事に就くべきか、それとも条件の良い会社を選ぶべきか」。就活で企業を選ぶとき、多くの人がこの問題に悩みます。

就活の世界では、「やりたいことを見つけよう」「好きなことを仕事にしよう」とよく言われます。しかし、やりたい仕事が見つからない人や、やりたい仕事と条件の良い会社が一致しない人も多いはずです。

結論から言うと、ポイントは次の3つです。

  • 学生時代の「やりたい仕事」は、入社後に変わることが多く、当てにならない
  • 迷ったら、給料や休日、身につくスキルなどの「メリット」で選ぶほうが後悔しにくい
  • メリットのある仕事で2〜3年スキルを身につければ、そのあと転職で選べる道が広がる

この記事では、やりたい仕事よりメリットのある仕事をおすすめする理由と、メリットで企業を選ぶときの具体的な考え方を解説します。

企業選びの基準は、大きく分けて2つ

就職する企業を選ぶときの基準を、極端にシンプルに考えると、次の2つに分けられます。

  • やりたい仕事:自分が興味を持っている、好きだと思える仕事
  • メリットのある仕事:給料、休日、身につくスキルなど、自分にとって得られるものが多い仕事

もちろん、やりたい仕事とメリットのある仕事が一致すれば、それに越したことはありません。問題は、2つが一致しないときです。

やりたい仕事で選ぶ場合と、メリットで選ぶ場合の違い

やりたい仕事が当てにならない3つの理由

私は、2つが一致しないなら、メリットのある仕事を選ぶべきだと考えています。その理由は、学生時代の「やりたい仕事」が、意外と当てにならないからです。

理由1:働き始めると、やりたいことは変わる

学生のうちは、実際の仕事を経験したことがありません。外から見て「楽しそう」と思っていた仕事も、実際にやってみると想像と違うことはよくあります。反対に、興味がなかった仕事が、やってみると面白いこともあります。

理由2:時代とともに、仕事そのものが変わる

技術の進歩や社会の変化によって、仕事の中身は変わり続けます。学生のときに思い描いていた仕事が、10年後には大きく形を変えていることも珍しくありません。

理由3:やりたい仕事に就けても、条件が合わないことがある

やりたい仕事に就けたとしても、給料が低い、休みが少ない、勤務地が合わないといった理由で、長く続けられないこともあります。「好きなことだから」と無理を続けて、心や体を壊してしまっては意味がありません。

「メリットのある仕事」とは何か

では、私が考える「メリットのある仕事」とは何でしょうか。大きく分けると、次の3つの種類があります。

メリットのある仕事の3つの種類

1. 条件のメリット:給料・休日・勤務地

給料が高い、休みが多い、住みたい場所で働ける。こうした条件は、毎日の生活の満足度に直結します。とくに休日の多さは、働きやすさを大きく左右します。

2. スキルのメリット:転職に使える力が身につく

営業、経理、マーケティング、ITなど、ほかの会社でも通用するスキルが身につく仕事は、将来の選択肢を広げてくれます。

仕事の例身につくスキル将来の選択肢
営業提案する力、交渉する力、数字を追う力どの業界でも求められる。管理職や独立にもつながる
経理・財務会計の知識、お金の流れを読む力業界を問わず転職しやすい。資格にもつながる
マーケティング市場を分析する力、企画する力事業会社、広告、コンサルティングなどへ
IT・エンジニアシステムやデータを扱う力業界を問わず需要が高い
法務・税務に関わる仕事法律や税金の知識専門職として長く活かせる

3. 情報のメリット:お金や社会の仕組みがわかる

業界の動きや、お金の流れ、法律や税金のことなど、仕事を通じて社会の仕組みがわかる仕事もあります。こうした知識は、自分の生活やお金の管理にも役立ちます。

メリットのある仕事で、まず2〜3年スキルを身につける

私がおすすめするのは、メリットのある仕事に就いて、まず2〜3年でしっかりスキルを身につけることです。

新卒で入る会社で、一生働く必要はありません。スキルが身につけば、より良い条件の会社に転職したり、そのときに本当にやりたいと思える仕事に挑戦したりできます。

「スキルを得るために入社した」と思えば、後悔が減る

「この仕事がやりたい!」と思って入社すると、理想とのギャップに苦しみやすくなります。思っていた仕事と違ったり、条件が想像より悪かったりすると、どうしても後悔してしまいます。

一方で、「必要なスキルを身につけるために入社した」というスタンスなら、多少のギャップがあっても、「スキルが身についたら次に進もう」と前向きに切り替えられます。

将来のキャリアを考える若手社会人(イメージ)
※画像はイメージです

メリットで企業を選ぶときの手順

では、実際にメリットで企業を選ぶには、どうすればいいのでしょうか。次の手順で考えてみてください。

メリットで企業を選ぶ手順

ステップ1:自分にとって大事な条件を書き出す

給料、休日、勤務地、残業の少なさ、身につくスキル、会社の安定性など、自分が大事にしたい条件を書き出します。

ステップ2:条件に優先順位をつける

すべての条件を満たす会社は、なかなかありません。「これだけは譲れない」という条件を、上位3つくらいに絞りましょう。

ステップ3:条件に合う企業を集めて比べる

優先順位の高い条件に合う企業を集めて、企業リストにまとめます。数字で比べられる条件(年間休日、初任給、離職率など)は、そのままリストに書き込んで比べましょう。

「やりたいこと」がないのは、悪いことではない

就活では、「やりたいことがない」と悩む人がたくさんいます。でも、やりたいことがないのは、まったく悪いことではありません。

やりたいことがないからこそ、条件やメリットで冷静に会社を選べるのです。「軸」を無理に作る必要もありません。

面接で「やりたいこと」を聞かれたら

とはいえ、面接では「入社して何をしたいですか」と聞かれることがあります。そのときは、無理に壮大な夢を語る必要はありません。その会社で身につけたいスキルや、取り組んでみたい具体的な仕事を、正直に話せば十分です。

何を優先するかで、選ぶ会社は変わる

同じ「メリットで選ぶ」でも、何を優先するかによって、選ぶ会社は大きく変わります。代表的なタイプを3つ紹介します。

優先すること選ぶ会社の例注意点
お金(給料・年収)平均年収が高い業界・会社、成果に応じて給料が上がる会社給料が高い分、仕事の負担が大きいこともある
時間(休日・残業の少なさ)年間休日が多い会社、残業が少ない会社給料は業界の平均くらいのことが多い
成長(スキル・経験)若手に早く仕事を任せる会社、教育の仕組みが整った会社最初は忙しく、厳しい環境のこともある

どれが正解ということはありません。自分が何を大事にしたいかによって、選ぶべき会社は変わります。大切なのは、自分で優先順位を決めて、納得して選ぶことです。

優先順位は、途中で変わってもいい

就活を進めるうちに、優先したいことが変わることもあります。説明会で社員の話を聞いて、「休みよりも成長を優先したい」と思うようになることもあるでしょう。優先順位は、就活の途中で何度見直してもかまいません。

入社後の2〜3年で、意識したいこと

メリットのある会社に入ったら、入社後の2〜3年で、次のことを意識してみてください。

  • 身につけたいスキルを決めておく:「この会社で何を身につけるのか」を、入社前から言葉にしておく
  • 成果を数字で残す:売上、件数、改善した時間など、転職の面接でも話せる実績を残す
  • 社内の仕事を幅広く知る:自分の部署以外の仕事も知っておくと、次のキャリアを考えやすくなる
  • 「次にやりたいこと」を考え続ける:働く中で見えてきた、本当にやりたいことを大切にする

働き始めてから見つかる「やりたいこと」は、学生時代に想像していた「やりたいこと」よりも、ずっと具体的で現実的です。メリットのある仕事で経験を積むことは、本当にやりたいことを見つけるための近道でもあるのです。

メリットで選ぶときに、気をつけたい落とし穴

メリットで会社を選ぶときにも、気をつけたいことがあります。

給料の高さだけで選ばない

給料が高い会社は魅力的ですが、その分、残業が多かったり、厳しいノルマがあったりすることもあります。給料は、残業時間や休日の数と合わせて見ることが大切です。たとえば、年収が高くても、残業代を含めた金額だったり、休みが少なかったりすれば、時間あたりの給料は思ったほど高くないかもしれません。

「平均年収」の数字に注意する

会社が公表している平均年収は、管理職やベテランの社員を含めた平均です。新入社員の給料とは大きく違うことがあります。初任給や、入社数年目の社員の給料の目安も、説明会などで確かめましょう。

条件は、必ず数字で確かめる

「休みが取りやすい」「残業が少ない」といった説明は、人によって感じ方が違います。年間休日の日数、平均残業時間、有給休暇の取得率など、できるだけ数字で確かめるようにしましょう。

やりたい仕事とメリットについての、よくある質問

Q. やりたい仕事がはっきりしている場合は、どうすればいいですか?

やりたい仕事がはっきりしているなら、それを目指すのも素晴らしい選択です。ただし、その仕事の給料や働き方、将来性も確かめておきましょう。やりたい仕事とメリットの両方を満たせる会社を探すのが理想です。

Q. 転職を前提に入社するのは、会社に失礼ではありませんか?

入社した会社で全力で働き、成果を出すことが前提です。そのうえで、自分のキャリアを考えて次の道を選ぶのは、今の時代には自然なことです。ただし、面接で「すぐに辞めるつもりです」と話す必要はありません。

Q. 業績の悪い会社でも、メリットがあれば選んでいいですか?

身につくスキルなどのメリットがあれば、選択肢に入れてもかまいません。ただし、会社の将来性や離職率は必ず確かめておきましょう。

Q. メリットで選ぶと、面接で志望動機が書きにくくなりませんか?

志望動機は、「この会社で何を身につけ、どう活躍したいか」を書けば十分です。メリットで選んだからこそ、その会社の強みや、身につけたいスキルを具体的に語れます。給料や休日の条件をそのまま志望動機にするのは避け、その会社の事業や仕事の中身と結びつけて伝えましょう。

まとめ

やりたい仕事とメリットのある仕事が一致しないなら、メリットのある仕事を選ぶほうが、後悔の少ない就活ができます。

  • 学生時代の「やりたい仕事」は、働き始めると変わることが多く、当てにならない
  • メリットには、条件(給料・休日・勤務地)、スキル、情報の3つの種類がある
  • メリットのある仕事でまず2〜3年スキルを身につければ、そのあとの選択肢が広がる
  • 大事な条件を書き出し、優先順位をつけて、条件に合う企業を比べる

この考え方は、あくまで私の個人的な考えで、すべての人に当てはまる答えではありません。それでも、企業選びに迷ったときの考え方のひとつとして、参考にしてもらえればうれしいです。

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